永田カナの金型コラム

プロローグ

こんにちは!私は、町工場のヒロイン(自称)永田カナ。
名古屋の住宅街にある町工場「髙橋精機」で、“プラスチック用の金型”を作っています。

「プラスチック製品作り」について、
プラスチック産業の中心地愛知から
はじめての人にもわかりやすくお届けしていきます。

金型業界にいない人にとっては「金型を作るのは何がそんなに大変なの?」と感じることもあると思います。今回は、その「金型づくりのむずかしさ」にまつわるお話を、少しだけお伝えしますね。それじゃあみんな準備はいいかな?

「金型」を作るって、実はすごく大変なんです!


例えば、皆さんの手元にあるボールペンやパソコンのマウス、これらのプラスチック製品には必ず“金型の割れ目の痕”があります。これが「パーティングライン(PL)」と呼ばれるものです。


でも、もしかしたら「え、そんなの見た事ないよ?」と思うかもしれません。
実は、この部分はうまく見えないように工夫されているか、金型の精度がとても高くて目立たないか、あとから削ったりして消していることがほとんどなんです。

「パーティングライン(PL)」って?


まずは「パーティングライン」について。
簡単に言うと、2枚で一対の金型が重なったときにできる「隙間」のことです。

これ、実はたい焼きの例えでわかりやすく説明できます。たい焼きの周りについてるパリパリの部分、とっても美味しいですよね!あれは、たい焼きを作る時、2枚の鉄板を重ねたその隙間から生地がはみ出してできたもの。

それがプラスチック製品だとどうなるかというと、はみ出した樹脂は「バリ」と呼ばれ、出来上がった製品は不良品になってしまいます。そのため、金型を作る時は「バリが出ない金型」を作ることが、プラスチックの大量生産においてとても大切なんです。

バリが出るか出ないかの境目は、だいたい0.03~0.05mm程度。コピー用紙1枚は0.07mmほどなのですが、それよりも小さな隙間で金型を作らないといけません。その小さな隙間を鉄の塊の全周、すべてにわたって作らなきゃいけないのです!
これでとても大変だということがイメージできたと思います。

金型作りの難しさとは?

最近は加工する技術が進化して、データを使ってかなり正確な金型を作ることができるようになりました。
しかし、それでも型材の鉄は温度によって伸び縮みしますし、刃物も削る時に発生する熱で長さが変わることがあります。さらには、刃物が少しずつすり減るので、最初のデータ通りの形を作るのは本当に難しいのです。
結局、最後は人の手でていねいに直して、やっと「バリのない金型」が完成します。

POINT:パーティングライン(PL)

  • 成形品の表面の、金型の分割位置にできる線のこと
  • PLの位置が成形品の取り出しやすさを左右する
  • PLの位置は設計段階で慎重に計画される

実務では、設計図面を確認しながら「このPLは適切か」をチェックする場面も多く、金型屋として最初に注目するポイントの一つです。

まとめ

今回は「パーティングライン」通称「PL」という言葉を覚えてね!

金型の製作は、こんなにも細かいところに気を配らなければならない大変な作業なんです。私たち工場で働く人間が、どんなに細かい部分にこだわり、調整を重ねているか。こうした“見えない努力”がどれほど大切か、少しでも知ってもらえたらうれしいな!


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